少子高齢化の進展(65歳以上の割合:平成28年で27.3%)や晩婚化(39歳未婚率男性35.6%、女性23.1%)により、晩産化が進んでいます。1980年の第1子平均出産年齢は26.4歳だったものが、2013年には30.4歳と4年遅くなっています。これらに伴って、生殖に関する関心が高まっています。特に、目にすることが多いのが不妊治療ですが、受精に関してはまだ分かっていないこともたくさんあるのも現実です。
現在、食品と生殖の研究が進んでいます。その中でも落花生の薄皮中に含まれるレスベラトロールに関する研究は未だに動物実験の段階ですが注目を集めています。農薬の一種であるマンコゼブが起こすマウスの卵母細胞の細胞死や異常を落花生の薄皮に含まれるレスベラトロールで防ぐことが出来ることが報告されています(Oncotarget 8(4), 6233, 2017)。マンコゼブは住宅の芝生やゴルフ場、あるいは農場で使用され、その残留分はアメリカでは食品や飲料水を通して身体に入って来ると報告されています(例えば、Int J Environ Res Public Heal 8, 1402, 2011)。この研究では母マウスを農薬であるマンコゼブに暴露することによって、胎児の体重が37%も減少することが分かりました(図参照)。これに対して、飲み水の中に、レスベラトロールを1リットルあたり100mgあるいは200mg混ぜておくと胎児の体重は回復することが明らかになりました。これは、農薬による活性酸素産生や細胞死をレスベラトロールが防ぐこと意味しています。その結果、卵巣や胎児の保護につながったというものです。
この他にも、落花生には亜鉛が100gあたり2.3mgも含まれています(7訂食品栄養成分表)。男性の精液の中の唯一の金属イオンがこの亜鉛なのです。この亜鉛は前立腺から分泌されており、精液中のホルモンや酵素の働きを助けているのだと思われます。ちなみに、精液の濃度は季節要因もあり、冬の方が、精子数が増加します。
まだまだ、確かめるべきことがたくさんありますが、落花生と生殖機能の関係は興味深い研究テーマです。